わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
座りきりにさせないでください わたしは風
 りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで
コンマ  ピリオド
 ,
  や  .  いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

                               新川 和江 『わたしを束ねないで』より

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